研究概要 |
全海岸域の80%を占めると言われている海岸崖の侵食及びそれに起因する被害が世界的にも数多く報告されている。今後,温暖化によって生じるとされる海面上昇や地下水位の上昇を考慮すれば,この問題は深刻化する可能性があり,早急に検討する必要がある。本研究では,1g場模型実験と実海岸崖の現地調査を行い,波の侵食に起因する海岸崖(Soft cliff)の崩壊機構と侵食現象の特徴を調べている。得られた結論を総括すると,次の通りである。 (1) 北海道東部の海岸斜面よりサンプリングした不撹乱試料の力学特性は,比較的密な砂の強度-変形挙動を示し,強い構造異方性を示す。 (2) 波の侵食作用による斜面崩壊は,液状化現象ではなく,ノッチの形成後,すべりの発達によって,引き起こされる可能性がある。また,その崩壊は斜面強度,波高,波の作用回数に影響を受ける。 (3) 斜面内ノッチの進行は周期的に生じる小規模崩壊によってさらに拡大され,最終的に斜面崩壊に至る。また,構造異方性の影響はノッチの進行方向,侵食速度に影響を及ぼす。 (4) 波の侵食による侵食距離ならびに堆積構造異方性の影響を考慮した斜面安定の簡易解析法は,1g場の模型実験結果を良く表現する。それゆえ,波の侵食作用にともなう種々の堆積構造をもつ斜面の安定性を評価する上では,本解析のような手法は有用である。
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