研究概要 |
高齢者のライフスタイルが多様化する現代社会において,政府の政策が世帯の時間配分にどの様な影響を与えるかを分析するためには,従来のような個人単位での活動時間配分モデルではなく,世帯単位でのモデル分析が必要となる.アクティブシニア世帯における夫婦は,個人単位での活動よりも世帯単位での共同活動からより大きな満足度を得ていると言われている.また,定年後は生活時間の多くを夫婦で一緒に過ごすため,活動選択や時間配分の決定において,夫婦同士の相互作用が大きく影響する.さらに,これらのシニア夫婦世帯は,経済面において可処分所得が大きく,自由に扱うことのできる経済的資源と時間資源を多く有していることにも着目する必要がある. 以上のような点に着目し,本研究では,次のような特徴を有する新たな時間配分モデルを構築し,シニア夫婦世帯を対象とした実証分析を行った. ・夫婦単位でのモデル化(世帯内時間配分) ・所得と時間の二つの制約条件を考慮 より,具体的には,所得制約と時間制約の2つの制約を考慮した活動時間配分モデルを構築し,社会生活基本調査から得られた世帯の時間利用データを用いてモデルを同定した.さらに,推計した活動時間配分モデルの政策感度を把握するため,福祉政策並びに交通政策に関連する二つの説明変数(県財政老人福祉費割合,県財政普通建設事業費割合)に着目し,これらの説明変数の変化に対する,効用水準と世帯時間配分変化の感度分析を行った.以上の一連の考察を通じて,世帯の時間利用パターンを分析するための実用的なモデル構築の可能性が示唆されたと考えている.
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