研究概要 |
リアルタイム交通情報提供のような,ITS施策の実施効果を検証するためには,時々刻々と変化する交通流をいかに詳細に把握し,いかに精緻にモデル化できるかが,分析の有効性を左右する鍵となる.本年度は,昨年度に構築した動的交通シミュレータと動的OD交通量推定方法を組み合わせることで,プローブカーデータからの動的OD交通量の推定可能性について,より現実的なフレームで検証した.特に,車両間のばらつきを有するプローブカーデータからでも,現実の道路ネットワークを対象として動的OD交通量が推定できることを示した.これにより,リアルタイムに収集されるプローブカーデータから,当該日時の交通状況をシミュレートすることが可能となり,また,より現実に即した情報提供効果の分析を可能とした.ただし,絶え間なく収集されるプローブカーデータから常にOD交通量を推定することは,計算コストが膨大となり実用的ではない.そこで,適切なタイミングでOD交通量の修正を行うため,収集されるプローブカーデータから交通状況が変化した時点を検出する手法を検討した. 次いで,ドライバーへのより現実的な情報提供効果を計測するため,過去に名古屋都市圏で収集し,昨年度開発したマップマッチングシステムによりデータベース化した.この際,前述の交通状況変化タイミングの検出アルゴリズムや信号交差点での旅行時間特性,時系列の交通状況変化を考慮し,より精度の高い蓄積データベースの構築手法の検討を行った.さらに,その上で,蓄積データベースから算出された予測旅行時間の,ドライバーへの提供実験を行った.ここでは,より現実的な効果計測を行うため,通勤行動を行う実際のドライバーに対して情報提供を行った結果,習慣化された通勤行動でさえも情報提供により経路変更行動が生じることや,自発的に情報の参照を行うドライバーほど経路変更意図が高い可能性を示した.
|