研究概要 |
本研究では,近赤外域の波長を利用したアルゴリズム開発を目的としており,可視域から近赤外域にわたる波長域での海面反射率を再現しうる光学モデルが必要となる。この光学モデルは,海中に存在する様々な溶存物質および懸濁物質の光学特性が必要となる。また,構築した光学モデルの評価には,実際に現場での観測が必要となる。今年度は,下記の2項目に関して研究を実施した。 1.無機性懸濁物質の光学特性のモデル化 無機性懸濁物質が非球形であることを考慮し,推定した複素屈折率を用いてT-matrix法およびRay-Tracing法により粒子の光学特性を算出した。しかし,これらの方法では全ての粒径を網羅できないため,一部,球形のモデルを複合させ,必要な光学特性の推定を検討した。 2.沿岸海域における船上観測 九州有明海とタイ国バンパコン川河口周辺海域において船上観測を実施した。リモートセンシング反射率の測定のため,海面上で放射観測を実施する際。海面での天空光の鏡面反射の影響を受けてしまう。そこで,鏡面反射を除去する方法を検討した。海面での下向放射照度スペクトルや上向き放射輝度スペクトルの762nm付近には,酸素の吸収帯があり,極小点がみられる。しかし,リモートセシシング反射率は,酸素の吸収の影響を受けないため,そのスペクトルは762nm付近に極小点が現れないはずである。しかし,鏡面反射率の文献値を使用して算出したリモートセンシング反射率の中には,その波長帯で極小もしくは極大を示すスペクトルが存在した。そこで,これらの極小もしくは極大が現れないように鏡面反射率を推定した。補正が正常にできたケースもあったが,補正しきれないケースも存在した。今後は,天空光を避ける測定方法を含め,補正方法の検討が引き続き必要である。
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