研究概要 |
近年,ヨード酢酸を始めとした有機ヨウ素系消毒副生成物がその毒性の高さから注目を集めている。前駆体である原水中のヨウ化物イオン濃度は低いと考えられるが,毒性の高さを考慮すれば毒性への寄与率としては高くなる可能性もある。そこで本研究では琵琶湖・淀川水系を対象として水系でのヨウ素の分布と排出メカニズムを明らかにするとともに,得られた濃度データから速度論的に有機ヨウ素系消毒副生成物の生成量を推計し,その水道水全体への安全性について寄与率評価を行った。 ヨウ素に対する文献調査からヨウ素は有機物として多く使用されていることと,他のハロゲンと比べて反応性が高いことから,水系でのヨウ素の存在形態が他のハロゲンと異なっている可能性があることが考えられた。そのため,本研究では水系でのヨウ素の存在形態がヨウ化物イオン・AOI(吸着性有機ヨウ素)・ヨウ素酸イオンの3つで存在すると考え,それぞれの水域内での各ヨウ素分布を測定した。その結果流下に伴ってそれぞれの形態ともに濃度が上昇した。また水系でのヨウ素の存在割合としては,AOIとしてが多く,次にヨウ化物イオン,ヨウ素酸イオンの順に比率が高いことを明らかにした。 最後に,バイオアッセイによる知見,実測されたヨウ化物イオンの濃度,速度論を用いて塩素消毒による有機ヨウ素系消毒副生成物の生成量をそれぞれ計算し,有機ヨウ素系消毒副生成物の重要性について評価を行った。その結果,琵琶湖淀川水系のヨウ化物イオン濃度(数μg/L程度)では,塩素処理での変換率を考慮すると,ヨウ素系消毒副生成物の寄与は低いことが分かった。
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