研究概要 |
2カ年目として,(1)市区職員を対象とした都市復興図上訓練プログラムの構築と参加者評価(日本都市計画学会論文集に掲載,および2nd ICUDRで報告),(2)練馬区における震災復興マニュアル策定支援を通しての都市防災対策の再検討,(3)トルコ・マルマラ地震での移転型復興事例であるアダパザルの事例研究(雑誌「都市計画」に論文掲載),(4)総合検討として「東京における事前復興まちづくりとコンパクトシティ」(学芸出版社から2008年後半に出版予定)の執筆をおこなった。 (1)については,(a)都市復興において重要な技術項目について専門家が専任的に助言する[特務班方式の導入],(b)発災後の復興に対応する庁内体制整備や計画案づくりについて,実情イメージを持ってもらうための[都市復興経験者との交流],(c)[成果発表会での質疑の工夫],の3点について手法改善を行い,東京都と協働で実行した。 また(2)については,人口30万人のアダパザル広域市の移転型復興事例の調査を踏まえ,被災地重視-新規市街地重視という軸と地域協働-行政主導という軸でわが国の災害復興事例との比較考察を行った。その結果,都市復興が満たすべき条件を「脆弱性の再生産を防ぎつつ,被災者の納得をえながら迅速に」とするならば,今後めざすべき方向は,行政による個別最適解による予定調和戦略ではなく,被災の激しかった地域と郊外未市街化地域の両地域にまたがるバランスの取れたトータルな都市復興戦略を「活動する被災者による布陣」でもって構築していく可能性を指摘した。 これら一連の研究は,これまでの防災まちづくりをリ・デザインする,という視点で取り組んできた。単に発災後に効果を発揮するのではなく,非常時を想定した一連の訓練プログラムが平常時のまちづくりにフィードバックされる「事前復興まちづくり」として展開に一定の道筋を見出したところである。
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