研究概要 |
都市をたたむ」計画技術は,建築ストックの状況,土地建物所有経営の形態,等にあわせきめ細かく戦略を描き,それら個別の戦略を「都市のグランドデザイン」の中に総合していく,中長期の戦略的なプログラムである。本研究では,その計画技術の具体的手法と政策のあり方の3点を明らかにした。 1典型的地区のケーススタディ 1)戦後の人口流入を受け急速に形成された市街地が,今後の核世代の高齢化を受けて急速に縮退していく,2)市街地は,その建築ストックの老朽化か交通利便性の悪さが主要因となって人口が流出し縮退していく,という2点の仮説をおき,東京都八王子市を対象として研究を進めた。町丁目別の人口構成データを用い,都市構造の分析を行った上で,戦後の最も古い時期に形成されたA団地,最も交通利便の悪いB団地の二つの大規模戸建て住宅団地を対象,登記簿データを収集し建築ストックの実態調査を行った。都市縮退に向かう特徴的な傾向が見ることができず,一団地の開発とはいえ多様な条件を持つ宅地の混ざり合った市街地が形成されていることが明らかになった。また,A団地自治会の協力を得て,319世帯を対象に意向調査を行って個別の住替え意向を探ったが,高齢化が不安要因である世帯であっても「住み続ける」という意向が強いことが明らかとなった。 2海外および東京の大都市圏における政策の実態把握 国内の文献や,ウェブサイトを通じて公開されている資料を通じて,EUの2つの大都市圏の政策の実態を把握し,「都市をたたむ」政策の全体像を整理した。また,東京大都市圏の基礎自治体を対象にしたアンケート調査を行い,市町村の「都市をたたむ」政策の実態と,課題市街地の位置,その課題を把握した。 3都市縮退シナリオのケーススタディ 八王子市の建築ストックデータを活用して,町丁目毎の建築ストックの寿命の視点から,都市縮退のシナリオのケーススタディを行った。
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