研究概要 |
Mg-Al-Ca基チクソモールディング(TM)成形材に対してMmをマイクロアロイングした場合に形成される,粒内析出物に関して詳細な調査を行った.粒内析出物はMmを含んでおらず,Mg-Al-Ca三元化合物である可能性が高く,特にMmのマイクロアロイングによるCaの母相への固溶量の変化が析出量に大きく反映していることが示唆された.従って,適切な希土類元素を選択することにより,粒内および粒界へのCaの分配を変化させられることが出来れば,粒界晶出物を希土類元素で安定化し,かつ粒内に微細かつ高体積分率の析出物を導入できる可能性が示唆された. また,Mg-Y-Zn基合金へCaおよびNiをマイクロアロイングした試料に対し,高温クリープ試験を行ったところ,Ca添加材は3元合金に比べてクリープ強度が増加したが,Ni添加材は3元合金よりも大きくクリープ耐性が劣化した.電子顕微鏡を用いたミクロ組織の詳細な解析より,Caを添加すると,粒内に導入される積層欠陥が高密度にかつ微細に分散するため,積層欠陥と転位との相互作用が大きくなることがわかった.この現象はCaが持つMgの積層欠陥エネルギー低下効果と析出物の微細化効果の二つが関与していると考えられる.一方3元合金では静的に導入される積層欠陥よりもむしろ,YとZnの固溶に伴う積層欠陥工ネルギー低下による変形転位の移動度の低下(変形転位の大幅な拡張)が重要である.Ni添加材では高濃度にYおよびZnを含んだ化合物が高い体積分率で形成されるため,母相内のYおよびZn濃度が低下し強度の劣化を招いたが,Niの拡散係数は非常に小さいため,製造法の工夫等で化合物の形成を抑制できれば,クリープ強度増加の可能性がある.以上より,Ca添加によって上記合金系の強度が大幅に改善可能であると考えられる。
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