研究概要 |
LiNi(Co)O_2型リチウム電池正極材料の劣化診断として二つの視点から研究を進めた:(1)添加されるA1・Mgの状態分析(2)劣化と密接に関連するNiの価数異常のマッピング. (1)劣化前後でのドーパントA1とMgのK殻吸収端スペクトルをEELS及びXAFSで測定,第一原理計算よりスペクトルを解釈した上でA1とMgが及ぼす化学結合状態変化を調べた.A1は非常に強固なA1-0結合を有すため,充放電サイクル後にLiA1O_2様の同じ結晶構造をもつ化合物に類似した吸収スペクトルを一部示した.Mgは3-4Åの範囲のNi-O結合を強化するが,充放電サイクル後には一部正極材料から抜け出ることがスペクトル強度の低下より示された. (2) 走査透渦型電子顕微鏡に付随するEELS分光器により,正極中の遷移金属(Ni,Co),酸素の内殻吸収スペクトルをナノレベルの位置分解能で2次元スキャン測定した.このデータセットを多変量解析の一手法であるSelf Modeling Curve Resolutionにより次の3成分に分解した.すなわち,LiNi(Co)O_2本来のスペクトル及び,Liが欠損したNi(Co)O_2様のスペクトル更に,Ni(Co)O様のスペクトルである.これら3成分の強度の2次元分布より,正極一次粒子の表面近傍で劣化が起こることが見出された.この解析は,電子チャネリングを用いたサイト選択的EELSにおいて,サイト選択性を系統的に変化させたスペクトルデータ列から純粋なサイト固有スペクトルを抽出した経験に基づくものである.
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