研究概要 |
【研究内容】本研究では,従来のブラッグピークに基づく結晶構造解析法ではなく、液体やアモルファスなどの非晶質材料の構造解析手法である"二体分布関数解析法"をバナジウム水素化物(β-V2H)の構造解析に適用し、V格子構造の詳細解明を試みた。すなわち、放射光X線回折実験により得られたβ-V2H粉末試料の回折データについて、バックグラウンドや試料吸収などの補正を行い、1原子あたりの散乱強度に規格化された構造因子を得た。さらに、構造因子をフーリエ変換することにより二体分布関数を得た。バナジウム水素化物(β-V2H)の二体分布関数から,V-V原子間距離を直接観察することで,水素吸蔵によるバナジウム格子構造の変化についての重要な情報を得ることに成功した。すなわち、バナジウム原子が理想的な格子位置から0.01nm変位して、水素原子と安定な距離を維持していることが明らかになった。 【研究の意義および重要性】水素吸蔵合金の高容量化が求められている中、バナジウム系合金は水素吸蔵合金の中で最も高い理論水素吸蔵容量をもつことで注目されている。バナジウム系合金の更なる高容量化や水素吸放出特性の改善のためには、バナジウム水素化物についての基礎的研究で得られる情報が不可欠である。特に,水素化にともなうホストバナジウム格子構造の詳細解明、すなわち、理想的な格子位置からのV原子の"変位"の定量は,V-H間の相互作用を直接反映し,この値を正確に見積もることはバナジウム水素化物の安定性を考える上でとりわけ重要である。
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