研究概要 |
昨年度に引き続き,分散粒子の表面改質を要しない簡便な直接溶融混練法による有機・無機ナノコンポジットの創製を目指し,当初の計画通り以下の研究を実施した。 (1)溶融混練法による高分子中への分散に適した各種金属酸化物ナノ粒子多孔質凝集体の予備調製 粒径が10〜20nmの酸化チタン,酸化アルミニウム,酸化亜鉛の各種ゾルを出発原料として,ゾルのpH調整・無機塩添加操作により,各コロイド粒子水溶液分散系を不安定化(凝集促進)して,多孔質凝集体を調製した。その結果,pHや添加無機塩の種類・濃度により,凝集体の孔構造が大きく変化することを明らかにした。酸化チタン系では,凝集促進のための添加剤として無機塩の代わりに有機酸を所定量添加する実験も行い,無機塩添加の場合と比べて,より大きな孔を有する凝集体を調製できることが分かった。 (2)混練による溶融高分子中での凝集体の解砕・分散(コンポジット化) 研究(1)にて予備調製した凝集体を,親・疎水性が異なる複数の高分子とともにそれぞれ混練し,溶融高分子内部に発生するせん断力で凝集体を解砕して各金属酸化物粒子を分散させることを試みた。用いる高分子の粘度特性を考慮して,せん断力を可能な限り高い状態となる混練条件を検討した。結果としては,昨年度のシリカの場合ほどの良好な分散結果が得られなかったものの,解砕メカニズムに関する情報が得られ,混練時間を長くするなどの混練条件のさらなる検討により,分散性の改善の可能性が示唆された。 (3)シリカ/フッ素高分子系ナノコンポジットの引張り特性評価 昨年度調製に成功したシリカ/フッ素高分子ナノコンポジットを引張り試験に供した。シリカ分散粒径がナノスケールまでサイズダウンすると,伸びが低下しない等の特異な特性が発現することが分かった。 (4)本研究のまとめと報告 本研究の成果を学術論文あるいは国内・国際会議にて発表した(裏面の11.研究発表を参照のこと)。
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