研究概要 |
本年度は,Mg_2Si熱電材料の酸化実験を行い,その酸化機構を解明することにより,有効な耐酸化膜の設計指針を得ることに成功した。また,Mg_Si上への耐酸化膜の開発を目的として,ゾルゲル法や塗布法によるガラス膜の被覆やスパッタリング法によるβ-FeSi_2膜の作製を行い,Mg_2Si熱電材料の酸化抑制効果について調べた。また,固相反応プロセスによる低温合成技術を用いてAlとSnを共ドープしたA1ドープMg_2Si_<1-x>Snx(X≦0.1)熱電材料を作製し,その熱電特性について詳細に検討を行った。これらの主な研究成果は,下記の通りである。 1.Mg_2si熱電材料は673K以上の温度域で,Mg_2si+0_2→2MgO+Siの反応が顕著に起こることが分かった。また,Johnson-Meh1-Avrami(JMA)速度式を用いてMg_2Si熱電材料の酸化の温度依存性,時間依存性を詳細に調べたところ,酸素の拡散過程が律速であることが分かった。ガラス膜についてはMg_2Siとガラスの構成元素成分である酸素との間で反応が起こり,MgOとSiがMg_2Si焼結体表面に生成し,耐酸化膜としては十分機能しないことが分かった。一方,β-FeSi_2膜をスパッタしたMg_2Si焼結体は,大気中での熱処理による酸化は大幅に抑制されており,耐酸化膜として有効であることが分かった。 2.300KのA1ドープMg_2Si_<1-x>Snx(X≦0.1)の電子濃度は,0.0≦x≦0.1の範囲内ではSnの置換量に依存せず,最大5.3×10^<19>cm^<-3>の値を示した。Sn無添加のMg_2SiにA1ドープした系では,熱電無次元性能指数(ZT)の最大値は867Kで0.50であった。一方,A1ドープMg_2Si_<0.9>Sn_<0.1>では,ZT最大値は864Kで0.68であり,Sn無添加の系よりも36%高い値を示すことが分かった。
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