研究概要 |
酸化物中への水の溶解現象を溶解したプロトンがドーパントの影響を受けてどのように存在するかについて反応点の酸・塩基性に注目して検討を進めてきた. おもに希土類を添加したセリアを対象とし, 比較としてジルコニアや他の酸化物についてもドーパントによる相関係も含めて検討した. これまで, セリアについては低温合成において, イッテルビウムを添加したセリアのナノ粒子合成が可能となっている. これを室温のまま固化形成する方法を用いることで, 粒界を大量に導入したセリアを得ることができ, この試料について導電率測定を行った. その結果, 粒成長が開始する温度以下では, 粒界伝導と考えられるプロトン伝導が観察された. 高温では粒成長に伴い, バルク伝導として酸化物イオン伝導が観察された. また, 同様の試料について, 赤外分光を用いた測定において, いくつかの種類のOH基が存在していることが確認されたが, 室温での測定では, 試料表面の吸着水の影響を除去できなかったため, 既存の装置において150℃程度まで加熱できるよう改良した粉末拡散法を用いた測定を実施した. その結果, 温度上昇とともに表面吸着水を除去できることで, 内部および粒界に存在している水を分離することが可能になった. 単結晶での測定を比較として行う予定であったが, 導電率測定を実施できる単結晶が得られなかったため, 今後の検討課題として残った. しかしながら, 導電率の結果より, バルクよりも粒界に存在するプロトンの寄与が大きいことから, 粒界におけるプロトンの安定化について検討することの必要性が示唆された.
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