研究概要 |
微小溶融金属液滴がある部材に衝突し凝固する現象は,溶射技術や冶金技術などの材料加工分野において見られ,凝固した粒子の形状は,衝突速度や温度,および基材の物性など,数多くの因子によって影響をうける.この形状の違いは作製しようとする製品の質に大きな影響を与えることから,凝固した粒子の形状の制御が必要となる.本研究では,溶融金属粒子が基材に衝突し,偏平凝固するとき,その形状に対し影響する因子を解明するために,溶融液滴および基材表面温度径時変化の同時計測システムを構築し,溶融金属液滴の基材上での凝固形態に対する基材温度および落下距離の影響の検討を行うものである. 溶融金属液滴が基材上へ衝突すると,粒子から基材へ移動する熱に対する熱接触抵抗は,液滴が凝固するまでは急激に減少し,凝固後には増加する傾向が見られた。凝固後の熱接触抵抗の増加は,液滴底面の凝固による接触面積の減少によるものと推察された。偏平粒子の形態を決定するために重要であるのは,凝固前の熱接触抵抗であると思われるため,基材温度変化による影響を検討したところ,基材温度の上昇に伴い,衝突前の熱接触抵抗は低下する傾向が見られ,これは液滴と基材との温度差の低下によるものと推察された。 基材温度を室温とし,落下距離を変化させた場合には,落下距離が増大するほど落下中に冷却される時間が長くなることから,液滴温度は低くなるものの速度は増大するため,偏平率は大きくなり,凝固完了までの時間は長くなることがわかった。また,落下距離の増大に伴い,液滴温度の低下の影響を大きく受け,凝固前の熱接触抵抗は大きくなった。本実験の範囲では,飛び散りの少ない円形のスプラット(偏平粒子)を得るためには,落下距離の短い方がよいため,このような形態の粒子を得るためには熱接触抵抗が小さい条件の方がよいことが示唆された。
|