研究概要 |
本研究は吸着キャピラリー拡散管を用い, 臨界点付近で, 高精度な拡散測定手法の確立とその実測データの蓄積を目的とする. 本年度の成果としては : 1. 前年度の引き続き臨界点近傍用の拡散係数の測定装置の改良を行い, より一層測定システムの温度・圧力を安定させ, 測定が難しいとされていた有機金属化合物の超臨界二酸化炭素中の拡散係数の高精度な測定に成功した. ついでに, 装置付随する保持因子を測定し, 超臨界二酸化炭素中の無限希釈部分モル体積値も蓄積した. 2. 臨界点のまわりで, 拡散係数の測定では, CIR法はTaylor法より, 測定精度が高く, 有効であることを確認できた. 3. 拡散の測定では, 応答曲線にしばしば歪みやテーリングが起こる. これまでの拡散モデルでは, うまく解決することができなかったが, 本研究ではラングミュア吸着という新しい拡散モデルを提案(拡散管内壁で, 溶質と固定相との間で起きている吸着は線形吸着ではなく, ラングミュアタイプの吸着)することにより, 理論応答曲線が実測応答曲線を精度よく再現することに成功した. これによって, 歪みやテーリングが起きている場合でも, 正確な拡散係数の測定が可能となった. 4. 液体から超臨界流体まで幅広い範囲で各種有機化合物の拡散係数に適用可能な相関式を目指し, ここでは, 拡散係数が溶媒の温度, 粘度, および溶質の分子量との相関について検討し, 広範囲な粘度(密度)範囲, 溶質分子量範囲における推算式を提案した(D_<12>=αM^βT^γη^δ).
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