研究概要 |
レーザーを用いた宇宙ゴミの遠隔除去技術に関する研究として,従来の単波長のレーザーではなく,短波長レーザー光を予備的に照射した後,長波長レーザーを照射することにより,レーザーアブレーションによって試料表面上に発生する推進力の向上を図った.波長532nmのレーザーを予備照射したスポットに波長1064nmのレーザーを照射し,発生推進力を計測する実験を行った.結果として,金属を試料として用いた実験では大きな効果を確認することができなかったが,プラスチックを用いた実験では,予備照射により大きなアブレーション量の向上が確認できた.プラスチックでは、波長が短いほどレーザー光の吸収率が高いため,波長532nmのレーザーの方が,波長1064nmのレーザーに比べて高い推進インパルスを発生するが,波長532nmのレーザーを予備照射した場合,波長1064nmのレーザーを用いても、波長532nmのレーザーの場合と同程度の高い推進インパルスを発生させることに成功した.特に白色のプラスチック(材質:PVC-ポリ塩化ビニル)を用いた場合にこの傾向は著しく,予備照射によりターゲット材の表面の色が黒化したことにより,波長1064nmのレーザーでも高い吸収率を獲得しているものと考えられた. 本研究の成果は,予備的な表面処理を施すことにより、ターゲット材吸収率の波長依存性を越えた推進インパルス発生性能を獲得する方法論の可能性を示し,レーザー表面処理ならびに遠隔アブレーション技術の適用範囲を拡大に貢献するものと考えられる.
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