研究概要 |
材料を疲労破壊へと導くき裂の発生・成長と巨視的弾性域での繰返し負荷に伴うPSBなどの微視すべりの発生・成長は密接な関係がある.各種構造物の疲労設計や余寿命を評価するためには,これら疲労発生のメカニズムを解明するとともに適切にモデル化する必要がある.さらに得られた構成式を有限要素法に導入することにより,巨視的弾性条件下の繰返し負荷に伴う塑性変形の発生・成長シミュレーションが可能になるなど,変形解析の高精度化も期待される. そこで本研究では,降伏応力を超える繰返し負荷時に限定されず,降伏応力よりも小さく,巨視的には弾性域とみなされる低応力の繰返しに伴って発生・成長する塑性挙動を含む一般の繰返し弾塑性変形を対象として,現象論的な枠組みにおける構成式の提案を目的とした.なお,材料の弾塑性構成式に関する従来の研究では,単調増大負荷もしくは降伏応力を超える応力が繰返し作用する際に大きな塑性ひずみを伴って進行するラチェッティング現象やヒステリシス・ループを記述するものが主流であった.まず,建築構造用圧延鋼材であるSN490Bを供試材料として,一定両振り繰返し負荷に対する材料応答を取得し,下負荷面の概念を導入した非古典弾塑性構成式に弾性境界面および損傷関数を導入した新たなモデルとの応答特性との照査を行ってモデルの妥当性を検証した.
|