研究概要 |
高度情報通信社会の基盤となるSi集積回路(LSI)は,素子微細化による省電力化が限界に直面しつつある.この限界を打破し,次世代のLSIを実現するためにはSiウェーハの高機能化が必須である.このような背景の基,SiGe層とSi層の格子定数差(ミスフィット)を積極的に利用した「ひずみSi技術」は,現在国内外で最も注目を集めている技術の一つである.しかしながら,ウェーハ中に存在する貫通転位がその高機能化を妨げているのが現状である.本研究では,ひずみSiウェーハにおける欠陥密度の低減化に対する材料設計指針を与えることを目的として,Si/SiGeヘテロ界面のミスフィット転位に着目し透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてその原子構造を解析する.また,熱処理に伴うミスフィット転位の組織変化を時系列で観察し,貫通転位の形成プロセスを検討する.本年度は,転位の構造解析に加えて,エネルギー分散分光法(EDS)によりナノスケールでGeの濃度分布を調査した.特に,ミスフィット転位近傍のGe濃度分布を詳細に調査することにより,Geは昨年度に明らかにした積層欠陥上に優先的に存在することを直接確認することができた.また,その後の熱処理に伴い一定の間隔で導入されたミスフィット転位の形態が崩れるととともに,Geも膜内に均一に分布することを併せて確認している.本結果により,熱処理の初期段階では,ミスフィット転位が優先的にGeの拡散経路となることを示しており,Geの優先拡散経路となる転位および積層欠陥を利用した新たなナノスケールでのデバイス開発の可能性を示唆する結果が得られた.
|