研究概要 |
高等動物のミトコンドリアDNA(mtDNA)は細胞内に多数のコピー(体細胞では10^3コピー)として存在しており,母性遺伝様式とボトルネック効果(初期発生過程における極端なmtDNAの減少)に代表される,核ゲノムとは異なるミトコンドリアゲノムに特徴的な遺伝様式が行われている。しかしながら,これらの遺伝様式は古くからそのモデルや仮説が提唱されているが,実験的証明が不十分であり,そのメカニズムについて完全には理解されていない。mtDNAはミトコンドリア内膜を構成するタンパクの遺伝情報を有しており,mtDNAに生じる突然変異は我々にとって重篤な障害(ミトコンドリア病)を引き起こす原因となっている。その疾患に対する研究・解析が盛んに行われているものの,その遺伝様式・機構は未だ不明な点が多い。これらの事実は既存の手法では限界があることを示唆しており,新しいmtDNA解析法による遺伝様式・機構へのアプローチが必要である。本年度は,昨年度に作成した融合遺伝子をマイクロインジェクション法によって個体へ導入し,トランスジェニック系統を樹立した。現在,その蛍光を確認するために,初代培養細胞や免疫化学的手法による実験を実施した。この他に,別の蛍光蛋白についても検討したが,発現が弱い・蛍光強度が低いなどの問題のため,これらについては本目的の観察には適していないと判断した。作製されたTgマウスとミトコンドリアを蛍光蛋白により標識したTgマウスとの交雑により,ダブルTgマウスを樹立しており,これらのマウスにおいても発現の確認をしている。特に,超高感度共焦点顕微鏡システムを用いることで励起光量を極力抑え,長時間のタイムラプス解析を実施した。現在さらに樹立した系統に,異常あるか否かを検討中である。
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