研究概要 |
重力による微小管の配向調節機構を明らかにするために,シロイヌナズナおよびアズキ芽生えを遠心過重力環境下で生育させ,微小管の構築と機能に関わるタンパク質のレベルと,それらを改変した突然変異体の重力に対する反応性を解析した。まず,微小管原繊維の構成単位であるα-チューブリン(TUA1〜TUA6)およびβ-チュ-ブリン(TUB1〜TUB9)の遺伝子発現に対する重力の影響を調べたところ,程度の差はあるもののすべての遺伝子の発現が重力の大きさが大きくなるにつれて増加した。また,γ-チューブリン遺伝子の発現は過重力により一過的に増加した。次に,様々な微小管結合タンパク質の発現を解析したところ,MAP65,MOR1,SPR1,SPR2の発現が過重力により減少した。ところが,微小管切断活性を持つカタニンの遺伝子発現は過重力により一過的に増加した。また,これらの微小管関連タンパク質のレベルも基本的に遺伝子発現と同様のパターンを示した。以上のことから,微小管の構築と機能に関わる多くのタンパク質のレベルが重力により制御されていることが示された。特に,γ-チューブリンおよびカタニンのレベルは,微小管の配向変化に先立って速やかにかつ-過的に増加したことから,重力による微小管の配向調節において重要な役割を担っていると考えられる。 次に,α-チューブリン,β-チューブリン,MOR1,SPR1,SPR2,MAP65およびカタニンの変異体の過重力に対する反応性を解析した。その結果,SPR1の変異体以外では,過重力による形態の変化は見られなかった。また,重力による微小管の配向の変化も観察されなかった。したがって,これらの微小管関連タンパク質は,過重力による微小管の配合を介した形態変化に関与していると考えられる。 以上のように,微小管の構築と機能に関わる多くのタンパク質が,重力による微小管配向の調節に関与している可能性が示された。
|