研究概要 |
本研究は、野生ダッタンソバ(Fagopyrum tataricum)の種分化の分子機構を解明し、高緯度、高地への適応とフラボノイド遺伝子の進化の関係を明らかにすることを目的とした。Fagopyrum tataricumにおいて、特異的にフラボノイドの一種であるルチン含量が高まっており、さらにF. tataricumおけるルチンの蓄積量の変化はUV-B感受性であることがわかっている。そこで本研究では、フラボノイド合成酵素遺伝子のDNA多型を調べ、集団遺伝学的手法を用いてルチン含量の変化に関する機構を分子レベルで解明することを試みた。ルチン含量に違いのある二種、F. tataricumとF. homotropicumをもちい、フラボノイド合成経路の上流で働く二つの遺伝子、カルコン合成酵素遺伝子(Chs), およびフラバノン3-水酸化酵素遺伝子(F3h)の塩基配列を決定し, 比較解析を行った。その結果Chsでは、F. tataricumとF. homotropicumの間で、コード領域内で47箇所の塩基置換みられたが、そのうちアミノ酸を変える変異は2箇所のみであり、いずれも活性部位ではなかった。F3hは二つの遺伝子座が確認でき、24および26箇所の塩基置換のうち3よび5箇所のアミノ酸置換がみられたが, いずれも活性部位ではなかった。これらの結果から, 今回調べた3遺伝子座のコーディング領域における塩基置換は直接的にルチン含量を変化させたのではないことがわかった。
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