研究課題
若手研究(B)
神経系と免疫系の間には密接な相互作用が存在し、両者の相互作用が生体機能を巧妙に調節していることが明らかになりつつある。我々は、上頸神経節(SCG)とマスト細胞が接着分子N-cadherinやCADM1のそれぞれホモフィリックな結合を介して接着し、サブスタンスPやATPをメディエーターとした効率のよい情報交換を行っていることを明らかにしてきた。本研究では、感覚神経である後根神経節(DRG)とマスト細胞の相互作用の分子機構を明らかにすることを試みた。新生児マウスから単離したDRGはCADM1がほとんど発現していなかったが、DRGと骨髄由来マスト細胞BMMCを共存培養したところ、CADM1が接着部位に強く集積していることが分かった。そこで、CADM1を発現していないマスト細胞株IC-2細胞を用いてDRGとマスト細胞の相互作用におけるCADM1の役割を追究した。IC-2細胞にCADM1を発現させた細胞株を作製し、DRGに対する接着効率を調べたところ、CADM1発現IC-2細胞は野生型のIC-2細胞に比べて接着効率が有意に増加した。また、CADM1はDRGとの接着部位に強く集積しており、ここには神経シナプスのマーカー蛋白質であるVGLUT1も局在していた。一方、神経刺激に伴う応答率もCADM1発現IC-2細胞の方が野生型のIC-2よりも有意に高かった。マスト細胞側のCADM1と結合するDRG側の接着分子について検討したところ、nectin-3の関与を示唆する結果が得られた。このことから、マスト細胞に発現しているCADM1はDRGに発現しているnectin-3とヘテロフィリックに結合して両社の効率的な相互作用に関与していると考えられた。また、CADM1はSCGとランゲルハンス島α細胞との相互作用にも接着分子として重要な役割を果たしていることも見いだした。
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