研究概要 |
本研究では,蛍光1分子イメージングとDNA1分子力学測定技術を融合した顕微鏡の開発と,この顕微鏡を用いた多次元同時測定によるDNA複製・修復・組み換え時のDNAとDNA結合タンパク質1分子間のこれまで見ることができなかったダイナミックな相互作用の分子論的解明を目指している。 (1)顕微鏡と計測解析プログラムの開発:効率よくチャンバー内の溶液が交換できるようなフローシステムを設計し,ガラス基板,両面テープの選定,PDMSによる設計を行った。また,1分子同時計測に必要なメカニカルな部分の駆動,磁気ビーズ像,蛍光1分子イメージングのための画像取得,DNAの力学変化に伴う磁気ビーズの3次元的な位置と1分子蛍光強度測定が行えるプログラムを開発した。 (2)蛍光1分子イメージングのための大腸菌ヘリケースUvrDの蛍光標識:SH反応特異性が高いmaleimide基をもった蛍光色素で標識したヘリケースUvrDの蛍光標識サイト(Cys残基)を酵素消化・アミノ酸配列解析によって決定した。さらに,特定の単一のCys残基に70%程度の標識率でUvrDを活性を損なわずに蛍光標識することができた。 (3)表面コーティング法の新規開発:現在1分子計測世界で標準的に行われているPEGコーティング法は,本研究に必要なだけのガラス表面上で十分なタンパク質の非特異吸着抑制能がない。そのため,プロトコールの改良を行い,タンパク質のみならず,半導体超微粒子(Qdot)のガラス表面上での非特異吸着抑制を抑制することができた。 (4)1分子同時計測系の確立:磁気ピンセットで操作しているDNAに相互作用している蛍光色素,Qdot,蛍光ビーズで蛍光標識したヘリケースUvrDを1分子レベルで観察することに成功した。本研究に必要な同時計測系を確立できたことになる。
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