研究概要 |
本年度は,放線菌Streptomyces(S.)coelicolorA3(2)に存在するチロシンリン酸化タンパク質について,それらによる形態分化および抗生物質生産制御機構を明らかにすることを目的とし,以下の研究を実施した。 1チロシンリン酸化タンパク質SCO5717の遺伝子破壊株の作製これまで,S.coelicolorのチロシンリン酸化タンパク質としてSCO5717を同定しており,SCO5717遺伝子をS.coelicolorに導入すると,増殖の遅延および色素性抗生物質の生産抑制が認められることを明らかにしている。SCO5717の機能をさらに明らかにするため,昨年度,SCO5717破壊株作製のためのベクターを構築した。本年度は構築したベクターを用い,相同組換えを利用したsingle crossover法により,SCO5717破壊株を作製した。作製したSCO5717破壊株について,その表現型を観察した結果,破壊株は野生株に比べて早期に気中菌糸を形成するとともに,色素性抗生物質を早期に産生した。 2新規チロシンリン酸化タンパク質の同定昨年度,新規に開発したイムノアフィニティークロマトグラフィー法により,S.coelicolorからチロシンリン酸化タンパク質の分離・濃縮を行った。そこで本年度は,二次元ゲル電気泳動法および質量分析法を用いることにより,その同定を行った。その結果,新規チロシンリン酸化タンパク質として,superoxide dismutaseを同定することができた。 以上,本研究の成果として,放線菌チロシンリン酸化タンパク質の新規機能を明らかにすることができた。今後,抗生物質の生産制御への応用が期待できる。
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