研究課題
若手研究(B)
平成19年度は、前年度同定されたメチル化標的候補分子群の中で、糖代謝系酵素群の機能解析を行なった。本研究により同定された標的候補分子の多くは解糖系およびペントースリン酸回路の分岐点およびその近傍に位置する。このことからストレス応答性に産出されたCOがメチル化を介して糖代謝のswitchingに寄与しているのではないかと着想した。CO処理により誘起される糖代謝酵素のメチル化修飾が糖代謝fluxにどのような影響を与えるかを検討するために、CO処理したU937細胞に安定同位体標識グルコース(^<13>C_6グルコース)を添加し、代謝物の流れをLC-MS/MSを用いて解析した。その結果、対照群に比べCO処理細胞において解糖系へのfluxの抑制とペントースリン酸回路へのfluxの増加が認められた。この際メチル化阻害剤を添加することによってCOの効果は軽減される傾向が見られた(投稿準備中)。これらの結果はCOによる含硫アミノ酸代謝の制御が糖代謝の重要なファクターとなることが示唆された。糖代謝はエネルギー産生、核酸合成、糖鎖合成など生命活動に必須な過程であり、解糖系からペントースリン酸回路へのswitchingは細胞増殖に密接に関係する。今後、酵素群の修飾部位の同定およびメチル化修飾による具体的な機能変化について詳細な検討を加える必要があるが、本研究はストレス応答時の細胞増殖機構の解明という基礎研究分野の発展のみならず、がん細胞の代謝特性を利用した、治療戦略開発のための基礎研究としても大きなインパクトをもたらすものと考える。
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