研究概要 |
この研究は,ショウジョウバエ三齢幼虫の成虫原基であるeye imaginal discを用いて,ゴルジ体による分泌方向の制御の仕組みを明らかにすることを目的としている。平成18年度の研究により,eye imaginal discのR8細胞のゴルジ体の分布はランダムではなく,核のapical側とbasal側に位置する傾向があることが示された。本年度は,まず,1μm毎の光学切片を用いて、"R8細胞におけるゴルジ体の位置を詳細に解析した。その結果,一つのR8細胞あたり平均4個のゴルジ体が存在し,核のbasal側に最も高い頻度で,そして核のapical側にそれに次ぐ頻度でゴルジ体が存在していた。これにより,特定の細胞における特定のゴルジ体(apical側ゴルジ体とbasal側:ゴルジ体)を位置的関係から区別することができるようになった。 次に,apical側,basal側に分泌されるタンパク質はそれぞれ別のゴルジ体を通っていることを示すために,様々な抗体による抗体染色を行った。Apical側に分泌されるBridge of sevenless(Boss)に対する抗体や,basa1側や神経軸索などに存在するFasciclin2に対する抗体などによる染色にチラミドによるシグナル増幅法などを応用すると,ゴルジ体に存在する抗原の検出も可能であることがわかり,それぞれの抗原を持つゴルジ体分布の詳細な観察を現在行っているところである。そして,次に電子顕微鏡を用いた観察の準備も進めている。 以上の研究から,小胞体,ゴルジ体,分泌小胞といった分泌経路を通るタンパク質などのcargo(積荷)が一部のゴルジ体を通過していることを示すことができれば,これまで均一にとらえられてきた分泌経路が,ゴルジ体の違いによって制御されている可能性を示唆することができると考えられる。
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