研究概要 |
本研究は、動物の組織・器官再生のメカニズムを進化学的側面から解析し、その共通性・多様性について考察することを最終目標とするものである。 昨年度中に単離していた3種類のmmp遺伝子(Ejmmp-a,-b,-c)についてin situ hybridizationによって発現領域を調べたところ、Ejmmp-aは頭部・尾部切断後1時間の段階で切断面付近の筋肉と思われる領域において、またEjmmp-bは切断後3時間の切断面付近の間充織細胞において発現していた。その後、Ejmmp-aの発現は切断後6時間、Ejmmp-bの発現は12時間という極めて早い段階で消失することが分かった。MMPが再生初期に何らかの役割を持っていることが示唆されたことは両生類四肢再生との共通点であると言えるが、一方でMMPの機能阻害剤GM6001投与が再生に影響を及ぼさなかったことから、ミミズにおけるMMPの正確な役割は明らかにならなかった。 mmpが発現する時間帯において神経が切断面付近にどのように分布しているかを、抗アセチル化チューブリン抗体を用いて可視化した結果、神経は切断後6時間目前後になって、ようやく切断面中央部にまで伸長(軸索再生)してくる事が分かった。軸索再生とmmp遺伝子の発現時期に、両生類四肢で分かっているようなポジティブな相関関係は見られなかった。 両生類四肢の再生芽細胞の増殖と関係することが示唆されているリン酸化MAPKの分布を調べると、神経の再生を追うように、9時間目前後から切断面付近の間充織細胞で顕著に観察された。この事から両生類四肢再生とミミズ頭部・尾部再生が、共通の細胞増殖メカニズムを用いている可能性が示唆された。またU0126,SU5402等の細胞内シグナル伝達阻害剤を再生中のミミズに投与し、再生にどのような影響が現れるかを調べたが、再生パターンに変化は見られなかった。
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