研究課題/領域番号 |
18780036
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用昆虫学
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大村 尚 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教 (60335635)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2007年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2006年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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キーワード | 触角感受性 / 嗅覚選好性 / 口吻伸展反射 / EAG応答 / タテハチョウ / 口吻歯状感覚子 / 味覚応答 / 発酵産物 / アカタテハ / ツマグロヒョウモン / 脚〓節毛状感覚子 / 糖受容 / 阻害作用 |
研究概要 |
(1)樹液や腐果を利用するアカタテハと利用できないツマグロヒョウモンを材料にして、口吻の味覚応答を調べた。摂食行動の初期段階で生じる口吻伸展反射を指標に3種類の糖に対する応答を調べたところ、両種ともショ糖>果糖>ブドウ糖の順に強い応答を示し、行動を解発する糖濃度は昨年度の摂食行動を指標にした結果とほぼ同じであった。歯状感覚子の糖応答を電気生理的に調べたところ、応答閾値は口吻伸展反射が生じる糖濃度に対応していた。腐敗食物の特徴成分であるエタノールまたは酢酸をショ糖に添加して行動や感覚子応答の変化を調べたところ、ツマグロヒョウモンのみ食物濃度の酢酸によって口吻伸展反射が抑制され、感覚子の糖応答も強く阻害された。以上の結果から、腐敗食物を利用するチョウの味覚受容器は、発酵産物(特に酢酸)が糖応答を阻害しないよう特異的な耐性を備えていることがわかった。 (2)6種のタテハチョウに食物由来の様々な匂い刺激を与え、嗅覚応答の違いを精査した。62の化合物を使って口吻伸展反射を指標に行動生理学的応答を調べたところ、6種のチョウは特定の芳香族化合物に強い応答(選好性)を示した。これらは様々な花香に含まれていることから、高い選好性はチョウの花蜜食性に起因すると考えられた。一方、エタノールや酢酸などの腐敗食物由来の匂い成分には腐敗食物を利用する3種のみ高い応答を示した。一方、利用しない3種は応答が総じて低く、酢酸によって活性物質への応答が阻害された。この結果から、腐敗食物を利用するチョウは嗅覚的にも発酵産物への適応性をもつことがわかった。39の化合物に対するチョウの触角電図(EAG)応答を調べたところ、口吻伸展反射で高い応答を示した化合物にはいずれも低いEAG応答であった。これより、チョウの嗅覚器は食物の匂いを強く受容しておらず、選好性の違いは末梢での情報受容ではなく中枢での情報処理に起因していると推察された。
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