研究概要 |
本研究は、スズメバチの幼虫が吐糸して作る繭(ホーネットシルク)が、高い細胞非接着活性を示すメカニズムを解明することを目的としている。平成19年度は、昨年度に続き、ホーネットシルクを構成するタンパク質のアミノ酸配列(一次)、二次および三次構造の解析、および生体材料としての利用するたあの素材化と安全性試験を行い、以下のことが明らかとなった。 ・キイロスズメバチのホーネットシルクを構成する主要タンパクをコードする遺伝子について、5'-RACEによる塩基配列決定を行い、昨年度に報告した予想塩基配列より高精度な配列情報を得た。また、ミツバチの幼虫が作るシルクとの二次構造比較から、ホーネットシルクのAla-rich領域とSer-rich領域の二次構造に関する知見を得た。 ・アミノ酸の規則正しい繰り返し配列を多く有するタンパク質がホーネットシルクに存在することを見出した。 ・国内に生息する主要スズメバチ6種のホーネットシルクのSDS-PAGEおよびN末端シーケンス解析結果の比較から、スズメバチ種によるホーネットシルクの差異と共通点を明らかにした。SDS-PAGEパターンにスズメバチの系統分類を支持する傾向が見られた。また、N末端の配列は、Vssilk1,3,4および5ではいずれのスズメバチ種も同一の配列を有しており、高い相同性を示唆した。一方で、Vssilk2のN末端配列については、スズメバチ種類問の差異が認められた。 ・固体NMR解析により、ホーネットシルクはCoiled coil構造を形成しやすく、その形成が発端となって、ゲル化が進行することを明らかにした。フィルム物性と、分子鎖絡み合い密度の関係を明ちかにすることにより、分子鎖ネットワークの構築がフィルム物性と関係していることを明らかにした。 ・ホーネットシルクの医療用素材としての安全性を評価するため、モルモットを使った皮膚感作試験を行った。結果は陰性であり、本研究で調べた範囲内では安全性が高いことを示唆した。
|