研究概要 |
分裂酵母のN-結合型糖鎖はマンノースとガラクトースから構成され、50から100糖もの巨大なガラクトマンナンが生合成される。ヒト型糖鎖(複合型糖鎖)に変換するための最初の段階として、コアとなる糖鎖構造であるマンノース3個、N-アセチルグルコサミン2個への生合成経路の改変を目指した。粗面小胞体内腔で機能しているα1,3-マンノース転移酵素をコードしたalg3^+遺伝子とゴルジ体内腔で機能しているα1,6-マンノース転移酵素をコードしたoch1^+伝子の破壊を試みた結果、二重破壊株ではマンノース5個、N-アセチルグルコサミン2個の糖鎖構造を有する糖タンパク質が生産される事を確認した。さらにマンノース2個を削除するために、各種マンノシダーゼに小胞体局在化配列を付加し、粗面小胞体内腔で削除を試みたが、効率が2割程度と低かった。そこで、動物細胞と同様にゴルジ体内腔での削除を試みるため、ゴルジ体局在型の糖転移酵素(分裂酵母の各種ガラクトース糖転移酵素)の様々な長さの膜貫通領域と各種マンノシダーゼのキメラを作製した。正しくゴルジ体内腔に局在させるためには膜貫通領域とルーメン側領域の長さが非常に重要である事が分かった。また、局在と活性の関係も複雑であり、効率を求めたさらなる解析が必要とされる。出芽酵母やメタノール資化性酵母を利用したヒト型糖鎖生産宿主に加えて、分裂酵母を宿主とした物質生産系を確立することにより、他の酵母で糖鎖変換率・生産効率の悪い糖タンパク質の改善、また、分裂酵母でしか生産できない新たな有用糖タンパク質の発見と開発につながる可能性がある。
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