研究概要 |
昨年度、研究代表者らは、ほとんど解明手段がなかった筋における糖取り込み機構の解析に極めて有効な高感度GLUT4膜移行評価系を構築した(Nedachi, kanzaki, 2006)。この構築と電気パルス刺激の条件検討(Fujita, Nedachi, kanzaki, 2007)によって本研究課題の迅速な遂行が可能となった。 そこでまず今年度は、C2C12の筋収縮すなわち運動効果をより高めるための分化条件を探索した。その結果、細胞外糖濃度変化による分化制御因子SIRT1とFOXO転写因子群による分化制御システムが重要であることを見出した(Nedachi et al., 2008)。これらの知見を利用して開発した高分化型C2C12に電気パルス刺激を付与し、筋収縮依存的に発現変動する遺伝子の網羅的解析を行った結果、運動依存的なGLUT4膜移行制御に新しい分泌タンパク質群が重要な役割を果たしていることを発見した(特願:神崎,根建,2007、Nedachi et al.,投稿中)。 GLUT4小胞の精製も進捗しており、その精製過程においてGLUT4小胞に結合するタンパク質Sortilinを見出した。Sortilinは脂肪細胞内で小胞輸送を制御するとの報告があったが、研究代表者らは筋のGLUT4膜輸送においてもこのSortilinが促進的に働くことを始めて発見、またSortilinの過剰発現はC2C12筋細胞の分化も促進することも見出した(Ariga, Nedachi et a1.,2008)。また、昨年度に引き続いて、本研究課題進行中に得られた情報についての解説を著した(根建,2007a,2007b)(有賀,根建他,印刷中)。 以上、本研究課題の推進により、筋におけるGLUT4膜移行制御さらには筋分化制御の新しいメカニズムが多数発見され、筋糖代謝研究分野に極めて大きな貢献が出来たと考えている。
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