研究概要 |
ビタミンD受容体遺伝子欠損(VDRKO)マウスとリガンドである1α,25(OH)_2D_3生合成の鍵酵素である1α水酸化酵素KO(1αKO)マウスの表現型は非常に良く似ており、ともに成長障害、低Ca血症、骨形成不全等が観察されるが、VDRKOマウスではこれらの表現型に加え、脱毛が観察される。よって皮膚においては1α25(OH)_2D_3非依存的なVDRの高次機能があると考えられる。そこで本研究では皮膚特異的VDRKOマウスおよび1α,25(OH)_2D_3のVDRへの結合依存的な転写促進領域(AF-2)に変異を導入したE420A/V421A/F422Aミュータント(AAA)およびΔAF2ノックインマウスを作出し解析することにより新たなVDR高次機能を明らかにしたいと考える。 昨年度までに作出したAAAおよびΔAF2マウスはVDRKOマウスと同様の表現型を示したが、脱毛は観察されなかった。本年度はまず皮膚での表現型が最初に観察されるのは生後20日であることを明らかにし、マイクロアレイ解析により、VDRKOマウスと野生型の比較で発現に差のある遺伝子群からΔAF2マウスと野生型の比較でも差のある遺伝子群を差し引くことで、皮膚における1α25(OH)_2D_3非依存的なVDRの標的遺伝子のスクリーニングに成功した。さらにリアルタイムPCRにより解析した結果、同定した遺伝子の一つであるS100a8はVDRKOと皮膚特異的VDRKOでのみ発現量が増加し、AAA、ΔAF2、1αKOでは野生型と同程度の発現量であった。またこの遺伝子のプロモーター領域を用いたルシフェラーゼアッセイにより、VDRあるいはVDRΔAF2を過剰発現させると転写が抑制されることが明らかとなり、S100a8は1α25(OH)_2D_3非依存的なVDRの標的遺伝子であり、新たなVDR高次機能の一端を担っていることが強く示唆された。
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