研究概要 |
近年,緑茶の主成分であるカテキンが,抗癌,抗アレルギー,老化抑制,血圧上昇抑制,脂質代謝改善作用などの生理作用を持つことが報告され,緑茶の飲用による生活習慣病の予防効果に大きな期待が寄せられている。しかし,カテキン類のこのような生理作用の作用機序は十分には解明されていない。我々は,カテキンがタンパク質中のシステイン残基のチオール基と付加体を形成することを見出している。本研究は,この現象がカテキンの多様な生理作用の発現の一端を担っていると考え,タンパク質システイン残基へのカテキンの結合がタンパク質機能に及ぼす影響を調べるとともに,カテキンが結合する標的タンパク質を特に培養癌細胞中から同定し,その機能とカテキンの生理活性の関係を解明することを目的として遂行した。申請者らは,カテキンのカテコール基とフェニルボロネイトアガロースゲルの親和性を利用することによって特異的にカテキン付加タンパク質をアフニティー精製する技術の開発に成功し,二次元電気泳動によって主要な緑茶カテキンであるエピガロカテキンガレートの特異的な標的タンパク質を培養癌細胞中から検出することができた。二次元電気泳動によって検出されたカテキン付加タンパク質をトリプシンによるゲル内消化を行った後,ペプチド断片をMALDI-TOFMSにより分析し,データベース解析を行い,カテキンが付加する標的タンパク質の同定を試みた。その結果,プロヒビチン,ビメンチン,およびGRP68などの癌細胞の増殖に密接に関与するカテキン標的蛋白質を同定することができた。現在,同定されたタンパク質へのカテキンの結合が与える機能変化を解析中である。
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