研究概要 |
本研究の最終的な目的は岐阜県高山の常緑針葉樹林内に建設されたタワーにおける観測データとモデルシミュレーションによって,常緑針葉樹林,落葉広葉樹林と直接計測が困難なパッチ上に分布した家屋・道路・農地・草地などの地表面における炭素・水・熱交換量の解明を目指すことである。本研究では観測とモデルを用いて各地表面の分割を行い,各々の地表面において炭素,水・熱交換量の検討を行い以下の点を明らかにした。 1.樹冠内における風向・風速の追加観測から,林床の風向と樹冠上の風向の関係には時刻・風速によって相違があり,モデルで再現する際に注意が必要であることがわかった。 2.本研究サイトは急傾斜地であり,渦相関法を用いて推定した常緑針葉樹林における物質交換量の扱いには特別な注意が必要であるが,純放射量の補正,吹き上げ角の補正を行うことで他のサイトと同レベルのデータクオリティが得られることが分かった。 3.補正後のデータを用いた解析結果から,常緑針葉樹林の物質交換量が放射量や温度の関数で近似できることが明らかとなり,単純なフィッティングモデルを用いることで,常緑針葉樹林の物質量のモデル化が可能あることが分かった。 4.落葉広葉樹林の地表面における炭素・水・熱交換量に関しては,風向の関係上,検出が非常に困難であることが示唆された。一方で,家屋・道路・農地・草地などの地表面における炭素・水・熱交換量については,数年に渡る長期の観測をおこなうことで,十分なデータが確保され解析が可能であることが示唆された。
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