研究概要 |
本年度は国内水産物の価格形成メカニズムに着目し、(1)産地価格と水揚量の市場間連動に関する研究と(2)国際価格が日本の水産物市場の価格形成に与える影響について分析を行った。前者は東北地方の主要サンマ漁港である女川と気仙沼の価格・水揚量データを用いて分析を行い、後者は輸入比率の高い7品目(サケ・マス類、マグロ類、エビ、イカ,タコ,カツオ,カニ)を対象に輸入価格と国内価格の長期均衡関係と誤差修正過程を明らかにした。分析結果は以下にまとめられる。 第一に,気仙沼と女川のサンマ産地価格の長期弾力性は約1.0と推計され,東北地方におけるサンマの産地市場の価格形成は効率的であり,価格情報はすでに統合されていると結論づけられた。第二に,産地市場の長期代替性は1.3と推計された。個々の産地市場は代替関係にあり,漁業者の水揚行動は産地の価格情報に速やかに反応していることが明らかになった。第三に、国内水産物の短期的な価格形成に着目すれば,水産物価格は主としてそのときの水揚量によって決定されており、国内での需給バランスが短期の価格形成において重要な役割を果たしていることが分かった。第四に,輸入比率の高い国内水産物の長期的な価格形成には輸入価格の影響が強く反映されていた。 水産業におけるグローバル化が進展するにつれて、日本の水産業は、国内価格の維持と国際競争という2つの課題に直面している。今後は、国際競争力を維持していくためにも、水産物の輸出振興と資源管理や品質管理を考慮した水産物の差別化が必要となるであろう。
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