研究概要 |
フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする箱施用浸透性殺虫剤は,稲の吸汁性害虫を対象とした殺虫剤であり,稲の組織内に吸収させるために育苗箱に用いる.本研究では''本薬剤がアキアカネ幼虫の生存率,羽化数,羽化行動に及ぼす影響を小型ライシメータにより検証した。小、型ライシメータ(350mm×500mm×300mm(H))には,地下水を供給し水深3cmとした。各ライシータは,フィプロニル区,イミダクロプリド区および無処理区とし,それぞれ3反復で実験を行った。アキアカネ卵は,それぞれのライシメータに300卵散布した.そして,各ライシメータ中のアキアカネ幼虫の生存率,羽化数を求めた。アキアカネ幼虫の生存率の減少が最も顕著だったのはフィプロニル区となり,羽化個体が観察されなかった。イミダクロプリド区では,田植後初期の生存率の低下がフィプロニル区と比較して小さかった。また,羽化個体が確認できた。しかし,幼虫の平均成長率および成虫の後翅長が無処理区よりも低下した。また,羽化異常を示す個体が無処理区に比べて高い割合で発現した。イミダクロプリドは,アキアカネ幼虫への直接的影響は小さいが,生物間の相互作用による羽化不全という間接的な影響をおよぼす可能性が示された。本研究により,フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする箱施用殺虫剤の使用は,アキアカネ幼虫の大きな減少を招くことが示唆され,箱施用殺虫剤の影響について基礎的な情報を得ることができた。今後は,実際の水田の農薬濃度の挙動とアカネ属種の発生の応答を明らかにするとともに,餌動物への影響について詳細な検討を実施する必要がある。
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