研究概要 |
年二作体系農業(二毛作水田)は,東アジア広範に行われ,食糧生産上も重要な農耕形態である.既往研究にみられる単作水田に比して,年間2倍近いCO_2固定能(ポテンシャル)を有するため,炭素の動態は,時期・量の点で大きく異なることが予想される.また,九州地域では,温暖な気候資源を利用した牧草の周年栽培が行われている.本研究では,これら年二作体系農業生態系における温暖化ガス交換量の特徴や,季節変化および年収支を明らかにすることを目的として,渦相関法によるCO_2フラックスの長期測定とその評価を行った.詳細な炭素循環サイクル解析には,さらに長期の観測が必要であると判断されたが,取得された通年データの解析から,以下のことが明らかになった. 水田転換畑(麦-大豆輪作)におけるCO_2交換量では,冬作(麦)耕作期間のCO_2吸収は,夏作に匹敵する規模を持ち,一方,CO_2放出は比較的小さいことが明らかとなった.一方,夏作(大豆)では,CO_2吸収自体は中庸であったが,夏期の高温により,生態系呼吸も大きくなった.いずれの耕作期間もトータルとしてのCO_2交換量は,吸収側であったが,その量を比較すると,冬作の方が1.5倍程度大きいことがわかった.さらに,周年作牧草畑(トウモロコシーイタリアンライグラス)耕作においても,夏作(トウモロコシ)耕作期間の生態系呼吸が高いため,結果的にトータルのCO_2交換量は,冬作(イタリアンライグラス)耕作期間が勝った.さらに,夏作期間では,台風災害や虫害等により,生態系炭素吸収量の年々変動が非常に大きく,このことが,炭素循環に大きく影響していることが示唆された.
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