研究概要 |
消化管ホルモンであるGLP-1は小腸から分泌されインスリン分泌促進作用を有する。GLP-1は,インスリンを介して間接的に糖代謝を調節していると考えられていたが,近年,直接的な糖代謝調節作用を有していることがinvitro実験系において明らかになってきた。本年度は,反鯛動物の糖代謝調節に重要な器官である肝臓に焦点をあて,動脈差法によるnet flux,薬物代謝学的手法であるfirst pass effect(初回通過効果)を用いて,糖代謝に及ぼすGLP-1の正味作用量について検討し,以下の結果を得た。 1. DEIは粗タンパク摂取量と正の相関を示す傾向にあった(r=0.35)。 2.肝門脈および肝静脈の血流量はDEIと正の相関があった。 3.GLP-1は,DEIの増加に伴い門脈系内臓組織および総内臓組織からの放出量および肝臓での取込量が増加した。 4.インスリンは,DEIの増加に伴い門脈系内臓組織および総内臓組織からの放出量が増加したが, 肝臓での取込量は変化しなかった。 以上より,エネルギー摂取量の変化に対する肝臓での反応はGLP-1とインスリンで異なることが示された。 GLP-1の末梢血中濃度は,栄養状態と正の相関を示すことが一般的に知られており,このことは,本研究結果と一致するものであった。しかし,同様の作用を有するイシスリンとGLP-1の肝臓での取込量が負の相関関係を示したことから,GLP-1はインスリンが不足した際の代替として作用している可能性が考えられた。
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