研究概要 |
オウム病クラミジアChlamydophila psittaci菌体の2次元電気泳動で展開したスポットの解析においては,C.psittaciの全ゲノム配列が未解読であるため,既読他種クラミジアデータベースを利用せざるを得なかった。そこで,より効率的にプロテオーム解析を進める目的で,ヒトへの集団感染時に分離されたC.psittaci Mat116株の全塩基配列決定を試みた。得られたMat116株ゲノムドラフト配列を元にギャップクローズを行い,暫定全塩基配列を得た。他種クラミジア全塩基配列との比較により,C.psittaciに固有と思われる配列が示唆された。また,ネコクラミジアC.felis新規抗原CF0218の性状解析を行った。 CF0218は動物由来クラミジア特有のtransmembrane head(TMH)領域にコードされ,特徴的な二峰性の疎水性モチーフを有していた。TMH蛋白質は疎水モチーフの存在から,クラミジアの封入体構成蛋白質Incファミリーに属すると推察されている。Incの幾つかは,クラミジアのIII型分泌機構(TTSS)により分泌されることが知られているため,CF0218についても検討を行った。赤痢菌にCF0218全長を導入し,培養上清へのTTSS依存的な分泌を検討したが,CF0218全長はクラミジア菌体内で不安定であった。赤痢菌体内での安定発現を目的にCF0218のC末端を除去した各種コンストラクトを作成し,引き続きTTSS依存的な分泌を検討している。CF0218については,感染特異的診断用抗原として使用可能な新規TMH蛋白質であることが明らかとなり論文投稿中である。現在は,得られたゲノム情報,プロテオーム解析を組み合わせTTSSエフェクターを初めとしたクラミジア病原因子の網羅的な解析を進めている。
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