研究概要 |
傷病救護された希少猛禽類は,1羽でも多くの個体を野生復帰させることが種の存続にとって重要であるが,実際の野生復帰率は極めて低いのが現状である。これは,野生復帰可能かの判断基準となる機能障害(特に関節障害)レベルの診断法が未確立であり,さらに客観的な飛翔訓練技術や訓練評価方法がないことも要因となっている。そこで,本研究では希少な猛禽類の野生復帰率を向上させて個体数の減少に歯止めをかけることを究極のゴールとし,傷病希少猛禽類の診断やリハビリテーションにおいて臨床獣医学的な技術を開発・実践して野生復帰率を向上させることを目標として,主に以下の2つの研究を行った。 1)コンピューター断層撮影(CT)を利用した3次元画像診断法の確立 4列ヘリカルCT撮影装置(東芝メディカルシステムズ,Asteion Super 4)を用いた猛禽類の診断条件を明らかにした。小型(チョウゲンボウ)〜大型(クマタカ)の猛禽類の全身骨格を3次元画像処理することが可能となり,エックス線検査では困難な関節障害(特に肩関節)の変位などの診断も容易に行えることが明らかとなった。 2)血中乳酸値を指標とした猛禽類の運動機能評価法の開発 乳酸値を指標としてリアルタイムに運動機能評価を行うため,ヒト用の携帯型簡易血中乳酸測定器(アークレイ株式会社,ラクテート・プロLT-1710)が適応可能であるかを検討し,本機が猛禽類の機能評価にも応用できることを明らかにした。実験訓練のモデル動物として利用したトビでは合計飛行距離800m程度のラインフライト訓練を2〜3回/週×3週間程度行うことで,明らかな運動機能の向上が認められ野生復帰可能となった。
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