研究概要 |
我々は、従来合成されたことの無いアクア-λ^3-ヨーダン(PhI^+(OH)OH_2X,X=TfO,Tf_2N)と18-クラウン-6との1:1錯体を合成し、その性質を明らかにした(平成18年度)。そこで、その反応性について詳細に調べることを目的とした研究を実施した。本錯体は室温で長時間安定であり、毒性や爆発性が無いという魅力的な特徴を有している。また、水に可溶であり、水中で分解しない反応剤であるため、溶媒として水を用いて各種酸化反応に使用できることが大いに期待できる。 我々は平成19年度科学研究費補助金により、本反応剤が期待通り水中において種々の基質の酸化(スルフィドのスルホキシドへの酸化、置換フェノールのp-キノール,p-キノンへの酸化、シリルエノールエーテルのα位酸化、スチレン誘導体のアルデヒドへの酸化、アルキル(トリフルオロ)ボラートのアルコールへの酸化)に極めて優れていることを明らかにした。また、本反応剤は水中で、合成化学的に価値の高いジアリール-,ビニル-,アルキニル-λ^3-ヨーダンの優れた前駆体として機能することも見出し、これを水中で使用可能な環境調和型反応剤として位置づけることに成功した。更に、オレフィンの酸化反応を検討する過程で、アクア-λ^3-ヨ-ダン(酸で活性化されたヨードシルベンゼン)が炭素-炭素間二重結合を切断する、従来未知の反応を開発することに成功した。これにより水中で使用できる安全なオゾン等価体を見出すことができたことになる。
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