研究概要 |
(1)膜疎水部の物性がヘリックス間相互作用へ与える影響 POPC膜を基本組成として(A)cholesterolを30mo1%含む膜(B)POPEを50%含む膜中における、ヘリックス(AALALAA)3の逆平行型二量体形成の熱力学量測定に成功した。これらは脂質組成の変化によるヘリックス会合熱力学の初の測定例である。組成(A)では ΔG=-20.9kJ/mol, ΔH=-69.1kJ/mol, -TΔS=+48.3kJ/mol,組成(B)では ΔG=-17.7kJ/mol, ΔH=-61.5kJ/mol, -TΔS =+43.8kJ/mol,だった。これらの測定値を、ヘリックス-ヘリックス間、ヘリックス-脂質間、脂質-脂質間力に分けて考察した。 (2)ヘリックスの水溶性改善による水-膜間分配の測定 ホストペプチドのN末端に(RK)5配列を付加し、中心にTrpを導入したペプチド、(KR)5-AALALAAAALWLAAAALALAAC(NBD)-NH2が、水中で主としてランダムコイル構造を取ることをCDスペクトルで確認した。また、NBDやTrpの蛍光極大波長は水にさらされた環境での極大波長を示し、このペプチドが水中でモノマーとして溶解することがわかった。また、脂質ベシクル添加によりペプチドは迅速に膜へ分配し、膜貫通ヘリックスとして膜に挿入することが明らかになった。脂質濃度を変化させ滴定を行い、このヘリックスの水-膜間分配エネルギー(ΔG=-34.2kJ/mol)を得た。今後、中心の残基およびホスト配列の疎水性を変化させ、各アミノ酸の水-膜分配エネルギー測定を行う上で、有望なデザインを見いだすことが出来た。
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