研究課題
若手研究(B)
STAP-2は自然免疫系・獲得免疫系シグナル間クロストークの中核を担う、非常に多機能なアダプター分子である。本年度は次の3つの研究よりその機能を明らかにした。(1)T細胞は炎症部位より産生された走化性因子により炎症局所に遊走・集積し、接着分子を介して組織へ浸潤し獲得免疫の担い手となる。この浸潤過程において、フィブロネクチン(FN)などの細胞外マトリックスとの接着が重要となる。そこで、T細胞の接着能へのSTAP-2の関与、および接着・遊走に関与するチロシンキナーゼFAKとの相互作用について解析を行った。STAP-2ノックアウトマウスにおいて脾臓由来T細胞のFNへの接着の亢進と、FAKタンパク量の増加が観察された。さらに、ヒト白血病細胞株Jurkat細胞STAP-2安定発現株において、コントロール株に比べFN接着の有意な低下と、FAKタンパク量の減少が観察された。このFAKタンパク量の減少メカニズムとして、E3リガーゼCblをSTAP-2がリクルートすることを明らかにし、STAP-2がFAKのユビキチン化・分解を促進するという新たな細胞接着抑制メカニズムを解明した。(2)STAP-2は転写因子STAT3と結合し、 IL-6サイトカインファミリーのシグナル伝達を亢進させることが報告されている。STAP-2は4箇所のリン酸化部位が同定されているがその機能は不明であった。IL-6ファミリーサイトカインLIFによりSTAP-2の250番目のチロシン残基がリン酸化されること、またそのリン酸化がSTAT3活性亢進に必要であることを明らかにした。(3)STAP-2はc-fms結合分子としてクローニングされたが、その機能的な相互作用は未解明であった。本研究において、STAP-2がマクロファージ細胞内でc-fmsと結合し、 M-CSFシグナルを抑制することでその運動能を制御していることを明らかにした。
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