研究概要 |
核内受容体を介する生埋作用を,低分子リガンドと受容体タンパク高分子の反応という観点から捉えるとき,反応のインターフェイスを提供するのは核内受容体である.これまでのリガンドデザインは,受容体親和性向上を目指したアプローチが大半であった.低分子リガンドによって,核内受容体のDNA結合能が変化する可能性を調べるため,核内受容体スーパーファミリーのうちからサブタイプの存在しないビタミンD受容体(VDR)に着目した.VDRリガンド結合領域に存在する唯一のアルギニン残基(Arg-274)をターゲットとし,まずは効率の良い誘導体合成法の確立を試みた.A環部2位にカルボキシル基を有する新規化合物の合成は,鎖状のA環部エンイン前駆体と側鎖部を含むCD環部を連結する収束的方法にて行った.VD3天然体にてアルギニン残基(Arg-274)認識に関わるのは,ステロイドA環の1位水酸基である.A環にカルボキシル基を有する新規誘導体のうち,1イ立水酸基を欠く化合物の合成は完了した.1位水酸基と2位カルボキシル基の共存効果を調べるため,現在,4種の立体異性体の合成を進めている. さらに,オリゴDNAを用いた評価系確立を目指し,ステムループ構造を有する2種のオリゴDNAの分離精製,及び同定方法を試みた.互いに相補的な4つの塩基からなるループ構造の場合,2種のオリゴDNAは質量分析により同定できることを見いだした.調整した新規オリゴDNAを細胞質内に導入できれば,内在性核内受容体と拮抗するdecoy DNAとして作用する可能性がある.rat osteosarcoma (ROS) 17/2.8cell line にて導入試験を行ったところ,オリゴDNAの導入後24時間後にVD3を加えた場合,VD3効果を顕著に減弱させる効果は認められなかった.オリゴDNAを加えるタイミング,その量について,現在検討を加えている.
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