研究概要 |
フルオロキノロン系抗菌剤(FQ)の多くは,主に未変化体として尿中に排泄される。その腎排泄には糸球体ろ過のみならず,近位尿細管での分泌が関与しており,その尿細管上皮細胞における輸送にはトランスポーターの寄与が大きいものと考えられているが,その分子メカニズムについては明らかになっていない。そこで本研究では,MATE1によるFQの輸送の可能性を考え,ラットMATE1(rMATE1)安定発現系を用いて輸送解析を行った。rMATE1による各種FQの輸送を評価した結果,用いたFQ全てにおいて有意な輸送活性が認められた。最も取り込み活性の大きかったnorfloxacin(NFX)を用いて詳細な輸送機能解析を進めた結果,NFX取り込みは顕著な濃度依存性を示し,ミカエリス定数は55.3μMと算出された。この輸送は,MATEの基質であるcimetidine,TEAにより有意に阻害された。しかし,細胞内pH(pHi)を変化させた場合,NFLXの取り込みはほとんど変化が見られず,前年度の検討で示されたpRi依存的なTEA取り込みとは異なる挙動を示した。このことはNFLXが両性物質であるため,H^+と交換輸送されるカチオン性物質(TEA等)と異なり,H^+非依存的に輸送される可能性が考えられる。従って,以上の結果より,FQの近位尿細管刷子縁膜における分泌にMATE1が関与している可能性が示され,その輸送メカニズムはH^+非依存的な促進拡散であることが示唆された。
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