研究概要 |
平成18年度の研究で,神経管におけるFbp1のシス調節領域を1.1kbまで絞りこむことに成功した。そこで平成19年度は,Fbp1のシス調節領域に結合する調節因子を,(1)得られたシス調節領域のシークエンスをもとに,データベースを利用してこの領域に結合する候補遺伝子を検索する,(2)発現パターンの類似性から候補遺伝子を検索する,という2つのアプローチを用いて同定を試みた。遺伝子発現の類似性から,WntシグナルがFbp1の発現調節を行っている可能性を考えた。Wntシグナルは二分脊椎マウスにおいてその関与が明らかとなっている。しかしながら,Wntシグナルに対する反応性を,繊維芽細胞を用いたルシフェラーゼアッセイで検討したところ,同定したFbp1シス調節領域は活性化されなかった。また,同定したシス領域にはShhシグナルのmediatorである転写因子Gliが結合する配列が認められた。しかしながら,この配列に変異を導入してもLacZの発現に変化は認められなかった。 また,同定したシス調節領域1.1kbは,マウスとヒトで高度に保存されていることから,この保存領域がヒトFbp1の発現を調節している可能性が十分考えられた。実際に相同なヒトゲノムを用いてエンハンサー活性の有無を検討したところ,神経管での発現は認められなかったが,神経堤細胞での発現は認められた。この結果から,この保存領域がヒトFbp1の神経管での発現を調節しているかは明らかでなかったが,少なくとも神経堤細胞での発現を調節している可能性が強く示唆された。
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