研究概要 |
高齢化や生活習慣の欧米化により、心疾患を発症する患者数の増加し、心不全の病態解明は早急の課題である。これまでの我々の研究から、心筋細胞障害に対する防御機構にクロライドチャネルが重要な役割を持つことが明らかとなった(Yamamoto, et. al. 2001, Yamamoto, et. al. 2004)。不全心筋では心筋クロライドチャネルの電気生理学的特性が変化しているとの仮説を立て、不全心筋モデルとして圧負荷心肥大マウスを作製した。平成19年度は、昨年度の上記手法で作製した肥大心筋の結果に続き、更なるメカニズムの解明のために、心肥大の原因になるα1-アドレナリン受容体刺激や、肥大心筋における心筋からのオートクライン的な分泌が類推されているATPおよびUTPの、心筋細胞容積調節に関与するCFTRチャネル電流(ICl.CFTR)と容量調節性Cl電流(ICl.volの作用を検討した。結果として、細胞外ATPおよびUTPはICl.CFTRを活性化させた。薬理学的な検討より、この作用は、P2Y2受容体-PLC-PKC系を介した反応であることが明らかとなった。更に、心肥大の原因にもなるα1-アドレナリン受容体刺激は、ICl.volを抑制し、その反応は、PI(4,5)P2を減少に伴う、PI(3,4,5)P3産生の低下が主な原因であることが明らかとなった。これらの実験事実は、クロライドチャネルが心肥大の伸展に、何らかの関与があることを示すものである。これらの実験結果は、The journal of physiological sciencesおよび52th Annual Meeting of Biophysical Societyにて発表を行っている。
|