研究概要 |
本研究の目的は,(1)本態性高血圧の発症に腎臓上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)が関与すること,(2)フラボノイドの高血圧抑制作用機構としてENaC機能の抑制が寄与することを検証することである。これまでの研究結果から,本態性高血圧モデルラット(SHR)および食塩感受性高血圧ラット(Dahl-S)は,血圧上昇過程における腎臓ENaC発現が対照ラット(WKY,Dahl-R)と比較して増大していることが明らかになった。このことから,高血圧の発症にENaCを介したNa^+再吸収の亢進が関与することが推察される。したがって,本年度は,フラボノイドが腎臓ENaCの発現を標的として高血圧の発症を抑制するか否かについて検証した。 代表的なフラボノイドであるケルセチンおよびゲニステイン(イソフラボンの一種)を用い,飼料に混入して4週間給餌した。Dahl-Sラットにおいて,ケルセチンおよびゲニステインはともに血圧上昇を抑制した。腎臓ENaC発現の増大は,ケルセチンにより抑制された。またケルセチンを摂取したラットでは,尿量および尿Na^+排泄量が増大傾向にあった。これちの結果は,ケルセチンが腎臓ENaC発現を抑制することで,尿量および尿Na^+排泄の増大を促し,血圧上昇を抑制したことを示唆している。一方,ゲニステインはENaC発現に影響をおよぼさなかったから,ゲニステインによる血圧上昇抑制には,ENaCを介した体液調節とは異なる機序が関与していると考えられる。 本研究より,高血圧発症にはアルドステロンによる腎臓ENaC発現の制御機構の破綻が関与しており,フラボノイドの一種ケルセチンはENaCの発現を抑制することで血圧上昇を抑えることが示唆された。
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