研究概要 |
本研究課題は、容積感受性外向整流性アニオンチャネル(VSOR)、あるいはその調節因子の分子を同定することを目的にしていた。KB上皮型癌細胞株においてVSORの機能的発現が見られるのに、KB由来のKCP・4シスプラチン耐性細胞株において見られないことが分かったので、まず、はじめに、KCP-4細胞株でのVSOR機能欠落は遺伝子発現の変化によるものなのか否かを調べた。遺伝子発現の変化を起こすトリコスタチンAという試薬でKCP-4細胞を処理すると、VSOR機能の部分的回復が見られたので、機能欠落が遺伝子発現の変化に起因していることが強く示唆された(Lee et al., 2007)。次に、遺伝子マイクロアレイでKB細胞株とKCP-4細胞株の発現遺伝子を比較した。それぞれの細胞株からRNAを抽出・精製し、蛍光ラベルcRNAプローブを作製した後、プローブをAgilent社Whole Human Genomeオリゴマイクロアレイとハイブリダイゼーションをしてマイクロアレイをスキャニングした。2つのカラースワップ実験を含めて4つの繰り返し実験を行った。マイクロアレイで調べた約40,000遺伝子転写物の中に、KB細胞株に比べてKCP-4細胞株において遺伝子発現量が5分の1以下に減少している遺伝子転写物が約400あるということが分かった。KB細胞において特定遺伝子をノックダウンしてVSOR機能への影響を調べるために、Invitrogen社pcDNA6.2-GW/EmGFP-miRプラスミドベクターをもとに、RNA干渉を起こす発現プラスミドを作製した。作製したプラスミドをKB細胞にトランスフェクションをしてVSOR活性に変化があるか否かをホールセルパッチクランプ法で調べた。現在のところ、数遺伝子を調査したが、はっきりした変化を確認できなかった。今後、未調査のVSOR関連遺伝子候補を試す必要がある。
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