研究概要 |
エストロゲン受容体α、β(estrogen receptor(ER)α,ERβ)のノックアウトマウス(ERα knockout mouse;αERKO,Erβ kmcckout mouse;βERKO)を用いて攻撃行動及び性行動におけるERの中枢神経系での役割に関する研究を行ってきた。一連の研究において、少なくとも雄ではErβは攻撃行動においてErαとは異なり、抑制的に作用することが示唆された。本研究では新生児期、乳児期のエストロゲン受容体及びアンドロゲン受容体の変化とそれらの相互発現調節を調べた。その結果 1. ER・βは新生児及び乳児期の脳内においてER-αと全く異なる発育上の変化を示した。従って、エストロゲン(リガンド)に対するER-β(レセプター)の遺伝子発現調節はER-αのそれと異なっていることが示唆された。 2. adultαERKO マウスでみられたように、新生児期においてもmedial preoptic area(MPOA)ではαERKOマウスにおいてERβの発現レベルの著名な減少を認めた。このようなgenotype differences(WT>αERKO)はその他の部位では認められなかった。従ってER-αの発現がMPOAにおけるER-βの発現に不可欠であることが示唆された。 3. ER-βの性差は生後6日でMPOA,bed nucleus of the stria terminahs(BNST),medial amygdala(MeAMY)において認められ、ER-αとは異なり雄の発現量が雌よりも多かった。従って脳内のER-βの性差は新生児期に既に存在し、ER-αのノックアウトによってもその性差の方向性は変化しないことが示唆された。 4. ER-αのノックアウトによりMPOAにおいてARの発現が雄雌ともに減少した。しかしながらそのほかの部位では、ER-α遺伝子のノックアウトによりARの変化を認めなかった。従ってMPOAにおいてER-αの発現はARの発現にも関与することが示唆された。
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